社会福祉法人愛寿会は、地域福祉の向上と災害時の安全確保を目的に、個人、組織、制度の3つのレベルで地域連携を推進しています。特に注力しているのは「地域全体の防災を考える取り組み」です。愛寿会は地域住民と協力し、防災計画の策定や避難体制の整備を進めることで、地域全体の防災力を高めています。今回は、愛寿会の防災活動を通じた地域連携の取り組みを法人事務局長 久保倉正二様にお聞きしました。
社会福祉法人愛寿会は、地域福祉の向上と災害時の安全確保を目指して、3つのレベルで地域連携を推進しています。一つは個人レベルの地域連携です。利用者を支える地域の関係者が連絡を取り合い、迅速に対応できる体制を整えています。特に力を入れているのが「地域全体の防災を考える取り組み」です。地域住民と協力し、防災計画や避難体制を整備し、地域全体の防災力を高めています。次に、組織間レベルの地域連携。北杜市包括支援センターや社会福祉協議会と連携し、在宅生活が困難な高齢者の入所支援を実現しています。また、人口減少問題にも対応するため、山梨県や首都圏の自治体と連携し、「やまなし人口減少危機突破共同宣言」に参加し、地域活性化の活動を展開しています。最後に、制度レベルの地域連携です。地域密着型特別養護老人ホームの新設を計画し、安心して暮らせる福祉基盤の整備に力を注いでいます。 上記の3つの連携のうち、特に力を入れているのが、『個人レベルの地域連携』に基づく「地域全体の防災活動」なのです。
・「こあらま地域の防災を考える会」設立総会(令和6年3月27日)
・北杜市職員と防災を考える会の会員による危険箇所を中心とした現地視察(令和6年7月17日)
上流に向かう現地視察団
きっかけ—災害の歴史から
小荒間地区は過去に何度も風水害に見舞われてきました。特に八ヶ岳の崩落による大規模災害があり、地域の多くが被害を受けました。平成18年には、当施設に隣接する古杣川と高川が「土砂災害特別警戒区域」に指定されましたが、これだけでは住民の命を守ることはできません。そこで、小荒間区の住民と協力し、河川改修を求める要望書を河川管理者に提出しました。
令和6年2月に得た回答では、古杣川の新規砂防堰堤や高川の事業化に向けた検討が進められましたが、具体的な整備時期は明示されず、さらなる災害対策が必要となりました。この背景から、「こあらま地域の防災を考える会」を設立し、地域住民とともに防災に関する勉強会や情報交換を行い、安心で安全な地域づくりを目指しています。
現地視察と災害リスクへの対応
令和6年7月、当施設の上流にある現地を視察した際、道路下を通る2本の土管のうち1本が大きな岩で塞がれていることが確認されました(写真参照)。このままでは大雨時に川が溢れ、道路が崩落する恐れがありました。施設職員と地域住民が協力して、この岩を手作業で撤去し、災害リスクを減らしました(写真参照)。この行動により、大きな災害を未然に防ぐことができました。
危険個所発見。土管による水道(みずみち)が岩で塞がれている
大きな岩を取り除いている
地域防災の絆へ
この地域連携を通じ、地域全体の防災力が向上したと実感しています。わたしたちは、入所者や職員の命を守るだけでなく、地域の皆さまと助け合う心が芽生え、交流の輪も広がりました。愛寿会は住み慣れた地域での尊厳を大切にし、安心して暮らせる生活環境を支援していく所存です。
愛寿会の3つのモットーは、次のとおりです:
1. 「利用者本位のサービスの実践」
2. 「専門性の生かせる職場づくり」
3. 「地域社会との協働と貢献」
未来へ向けたメッセージ
今後、わたしたちは大規模災害が発生した際に、地域住民と共に迅速に行動し、適切な対応を進められる体制を強化していきます。当施設は規模が大きく、市町村指定の避難所が遠い住民にとって、一時的な避難場所としての役割を果たすことができるでしょう。このような施設が増えることで、地域全体で防災に取り組む体制が整うことを期待しています。介護施設などの社会資源を活用し、地域全体で防災力を高めることが今後ますます重要になるでしょう。愛寿会は、地域社会と共に、安心・安全な未来を築くため、防災活動を続けてまいります。