
「ここって老人ホームだったの?」開かれた福祉施設
奈良県五條市野原西にある、複合型福祉施設・野原西Village。ここは、従来の福祉施設利用者だけでなく、地域の人びとが気軽に集い、日々、交流や自己研鑽を楽しむことができる開かれた場です。
実は野原西Villageへ移転をする以前、施設は山手の地に位置していました。地域の人に「ぜひ施設へ来てくださいね」と声をかけて待っていても、人々が施設を訪れることはほとんどありませんでした。こうした苦い経験から、塩崎理事長は「私たちが地域のなかに出ていかなくては」と強く感じ、まちなかへの移転を決意。野原西villageでは、特別養護老人ホーム、デイサービスセンターの運営に加えて、FMラジオ局、スポーツジム、カフェ運営など、福祉施設の枠組みを超えた、幅広い事業を展開しています。
TOPIC1
安心を届ける社福発のラジオFM五條
野原西villageの一角には、ガラス張りのラジオブースが設けられ、24時間放送を続けています。コミュニティFM局「FM五條」は、単なる情報発信の場ではありません。災害時には人命を守り、平時には地域をつなぐ役割を果たしています。
ご利用者が詠んだ和歌や俳句の紹介、職員発信の企画に加え、地元在住の芸人をはじめとした多彩なパーソナリティによって様々な番組が企画・制作されています。番組づくりのなかで徹底しているルールは「必ず防災情報を入れること」。五條市と防災協定を結び、警報が発令された際には即時に情報を届ける体制を整えています。

FM五條開設の背景
阪神淡路大震災に被災し、塩崎理事長は家族とともに避難所で過ごしました。不安な避難所生活で、励みになったのが、ラジオから届けられる声でした。
さらに、平成23年、台風12号による紀伊半島大水害では、移転前の祥水園の近隣集落も壊滅的な被害を受けました。避難の遅れが多くの命を奪ったと知った塩崎理事長は「いちはやく情報を発信できていれば、救えた命もあったかもしれない。施設移転の際には、必ずFM局を立ち上げよう」と心に誓いました。
TOPIC2
多世代が訪れる本格スポーツジムMiracle
ラジオブースの周りに並ぶのは、トレーニングマシンの数々。「これからは健康志向の時代」との思いから、スポーツジムMiracleは開設されました。
「お金をいただく以上、徹底的にこだわる」という理事長の姿勢が貫かれ、福祉施設とは思えない、本格的なジム空間が広がります。幅広い年齢層に満足してもらえるよう、多様なバーベルやマシンを取りそろえ、ボディーメイクのスペシャリストによるマンツーマンプログラムも準備しています。
実際、ジムには、幅広い年齢層のご利用者が訪れます。午前は、60代、70代の女性や退職後の男性、夜は大会出場をめざす若者や会社帰りの女性でにぎわいます。1日の利用者数は50~60名にのぼり、併設された炭酸泉の浴槽もトレーニング後にリラックスができると評判です。開設当初は厳しかった経営も、次第に地域に根づき、利用の輪が広がってきました。


TOPIC3
地域交流も広がるこだわりのカフェ澪の街
FM五條とスポーツジムMiracleのすぐ目の前には、カフェスペースが広がります。カフェ「澪の街」では、吉野川の景色を望みながら、地域の人びとがゆったりと過ごしています。
カフェ運営にも祥水園のこだわりは光ります。カフェをはじめるにあたり、理事長自らバリスタの資格を取得。さらに、人気メニュー「健康日替わりランチ」は、法人内の「野原ダイニング」で管理栄養士が監修。献立は薄味・手作りへのこだわりが貫かれ、「他の外食は味が濃い。この味がいいねん」と、リピーターも多い。
カフェはイベントや地域交流の中心地でもあります。ご利用者が一日店長を務める日や誕生日会、夏祭りの花火を眺められる開放日など、季節ごとににぎわいを見せます。地域の方から「写真を飾らせてほしい」と申し出があり、写真展の開催につながるなど、交流は広がり続けています。


TOPIC4
新たな福祉拠点・阪合部CLASS
祥水園の福祉と地域の拠点づくりの挑戦はまだまだ続いています。その一つが、五條市中町にある阪合部の地にこの秋オープン予定の新たな福祉拠点「阪合部CLASS(さかいべクラス)」です。もともとは空き家だった古民家を、地域にひらかれた共生の場へとリノベーションし、高齢者・障がい者・子どもが垣根なく過ごせる拠点へと再生するプロジェクトです。
この構想の発端は、祥水園の若手職員たちによる「やらせてほしい」という熱意でした。塩崎理事長の「まずはやってみよう、失敗ではなく“学び”がある」というスタンスが後押しし、プロジェクトは始動しました。古民家再生にあたり、左官や屋根の張替など、建物の修繕も、地域の人に教わりながら自分たちの手で進めています。
施設は、日本財団の「子どもの第三の居場所」事業の助成も受け、学習支援や子ども食堂、入浴・宿泊も可能な多機能拠点となる予定です。オープンの準備を進めながら、学生や地域ボランティアも続々と参加し、畑づくりや昔ながらの遊び、団子づくりやしめ縄体験など、温かな交流が日々育まれています。
阪合部CLASSは、空き家の再生にとどまらず、多世代がともに過ごし学び合う「未来の福祉」の実験場として、そして若者たちの夢と情熱の集積地として、新たな一歩を踏み出そうとしています。


施設概要

- 法人名
- 社会福祉法人 祥水園
- 所在地
- 奈良県五條市野原西3丁目3−41
- 理事長
- 塩崎 万規子
- URL
- http://shousuien.or.jp/
- 事業内容
- ・訪問介護
・通所介護
・短期入所生活介護
・認知症対応型共同生活介護
・居宅介護支援
・介護予防短期入所生活介護
・介護老人福祉施設 - 法人理念
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「してやる」のではなく、「させていただく」のです
(宗祖お言葉18)