「ゆいまーる」が息づく福祉 ニライカナイと地域がつむぐ共生のかたち 社会福祉法人 ニライカナイ(沖縄県南城市)

ゆいまーるの精神を今に

沖縄本島南部に位置する南城市には、助け合いの文化を象徴する「ゆいまーる」の精神が根づいています。

「ゆいまーる」とは?

「ゆい(結い)」は“協働”を「まーる(廻る)」は“順番にまわす”ことを意味し、かつては農作業や暮らしのなかで自然と行われていた相互扶助の知恵です。今もこの言葉は、地域福祉の根底にある価値観として息づいています。

揺らぐ「ゆいまーる」

しかし近年、都市化やライフスタイルの変化により、人と人とのつながりは次第に薄れ、地域の輪の中からこぼれ落ちてしまう人が目立ちはじめました。独居高齢者の増加や子育て世帯の孤立、障がいのある人が地域で声を上げにくい現実——。かつての「ゆいまーる」が揺らぎ始めているのです。

地域連携室の誕生

こうした変化に、いち早く危機感を抱いたのが、障がいのある子どもや大人の支援に取り組んできた社会福祉法人ニライカナイでした。「制度の枠を超えて、地域のつながりを編み直す必要がある」。その強い思いから、2022年、自治体の委託によらない独自の取組として「地域連携室」を設置。福祉を“特別な支援”ではなく、“地域の日常の一部”として育てていく歩みが始まったのです。

広がる地域ネットワーク―地域連携室の取組

地域連携室が目指すのは、「支援する・される」という一方向の関係ではなく、「ともに考え、ともに行動する」ネットワークを築くことです。

地域全体で支え合う

たとえば、ある地域住民から「家の片づけができず困っている」と相談が寄せられたとしたら、地域連携室は単に片づけを代行するのではなく、民生委員や自治会、近隣住民と連携し、地域全体で支え合う体制を整えることを目指しています。
日々の対話と実践のなかで、制度では捉えきれない“日常の困りごと”に寄り添いながら、地域の力を引き出す新たな仕組みが少しずつ形になっていったのです。

地域連携室の主な取組

●相談支援
●権利擁護支援
●サロン活動(地域の福祉ニーズ等を把握)
●福祉教育
●地域ネットワークづくり

言葉を超える―琉球ノビッターズの活躍

那覇市小緑地区の「こども発達支援センター のびっと」では、2011年から児童発達支援と放課後等デイサービスを展開。そのなかで生まれたのが、障がいのある児童たちによるヒップホップダンスチーム「琉球ノビッターズ」です。
週2回のダンス教室から始まった活動は、子どもたちに「表現する楽しさ」や「挑戦する喜び」を育んできました。

東京2020パラリンピックを目指して

琉球ノビッターズの挑戦は、地域を超えて注目されるまでに広がりました。東京2020パラリンピックでは、なんと開会式への出演が決定。しかし新型コロナウイルスの影響により大会は延期され、さらに規模縮小に伴って出演は叶いませんでした。
それでも「世界の舞台に立つチャンスを得た」という事実は、子どもたちにとってかけがえのない自信になりました。

地域に理解と感動が広がる

ノビッターズの活躍は、保護者や地域の人々にも勇気と感動を届けています。
「わが子もダンスを始めた事で自信が生まれ積極性が出てきた」
「障がいがあることを超えて、すごいって感じた」
そんな声が寄せられ、地域に少しずつ理解と共感が広がっていきました。
琉球ノビッターズは、言葉を超えて心を動かす存在として、福祉と地域を結ぶ“生きたメッセージ”となっています。

新たなゆいまーる―地域ふれあい福祉まつりの開催

地域の福祉課題に応えるためには、福祉関係者だけでなく、行政、教育機関、そして民間企業など、多様なプレイヤーが手を携えることが不可欠です。社会福祉法人ニライカナイは、地域連携室の設立以降、こうした多様な主体と協働しながら、地域のつながりを再び編み直す挑戦を続けてきました。その象徴ともいえるのが、2024年に開催された「地域ふれあい福祉まつり」です。

2024年7月28日、南城市役所で開催された「令和6年度 地域ふれあい福祉まつり」には、1,100人を超える来場者が集まりました。福祉施設の利用者やその家族はもちろん、地域住民、子どもたち、ボランティア、学生、企業関係者など、さまざまな立場の人々が一堂に会した光景は、まさに“ゆいまーる”の現代的な姿そのものでした。

この日、琉球ノビッターズもステージに登場し、障がいのある子どもたちによる力強いダンスパフォーマンスで会場を魅了しました。その姿は、地域の人々に福祉をより身近に感じてもらう機会となり、同時に子どもたちや保護者にとっても大きな誇りと励ましとなりました。

イベントの締めくくりには、地元企業の協賛による「お楽しみ抽選会」が行われ、60点にのぼる豪華景品が来場者に贈られました。この企画は、日頃からニライカナイの活動を理解し、支えてくださる企業や団体の存在があってこそ実現したものです。

民間企業と福祉との垣根を越えた連携は、地域における新たな共生の形を体現しています。「支援する側/される側」という関係を超え、互いに関わり合いながら生まれる「新たなゆいまーる」の姿が、少しずつ地域に根づき始めています。

施設概要

法人名
社会福祉法人ニライカナイ
所在地
沖縄県南城市大里字大城1388番地の1
URL
https://www.syahuku-niraikanai.com/
事業内容
●障がい者支援事業
●障がい福祉サービス事業
 生活介護
 短期入所
 共同生活援助
 就労継続支援
 自立訓練(生活訓練)
●移動支援事業、日中一時支援事業
●障がい児通所支援事業
 児童発達支援
 放課後等デイサービス事業
●一般相談支援事業
●特定相談支援事業
●障害児相談支援事業
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