多様性を力に変える保育園の地域実践
少子高齢化と外国人住民の増加という複合的な変化が進む、東京都北区・桐ケ丘。
このまちで、つぼみ会は、保育園という“ひとが集う場”を起点に、地域の多様な声に耳を傾けながら、ともに課題を見つけ、ともに解決し、誰もが安心して暮らせる「共生のまち」の実現に取り組んでいます。
取組の中心にあるのは、保育にとどまらない地域支援、宗教や文化への理解、そして、違いを尊重し合えるネットワークづくり。
「せかいのどこにいても豊かに生きることができる人を育てる」――そんなミッションを掲げるつぼみ会の実践を紹介します。
複合的な地域課題の先へ

東京都北区桐ケ丘――。この地域は、
・都営住宅が密集し、高齢化率は60%以上
・近隣には、南アジア諸国を中心とした外国人住民が多く在住
・文化・言語・宗教の違いから、孤立や行政サービスとの断絶が起こりやすい
という、複合的な地域課題を抱えていました。
そうしたなかで2018年、つぼみ会が運営する「LIFE SCHOOL 桐ケ丘こどものもり」は開園。地域のニーズに応じて変化しながら、保育・生活支援・地域交流など、広い分野で挑戦を続けています。


全国初の
「ハラル認証」取得で、
多様な文化に応える
開園後、地域の特色を反映するように、バングラデシュをはじめとするイスラム教徒の園児割合が少しずつ増えていきました。イスラム教徒には、摂取を禁じられている食材があるため、園ではイスラム教徒の家庭にも安心して通ってもらえるよう、保育園としては全国で初めてとなる「ハラル認証」を取得。
宗教的配慮が求められる食文化にも対応し、結果的に外国籍の園児が全体の約34%を占めるようになりました。
違いを恐れるのではなく「違うことっておもしろい」という感覚を子どもたちとともに楽しみ、日々の保育につなげている。


世界を身近に感じる「食育」から始まる異文化への理解
LIFE SCHOOL 桐ケ丘こどものもりでは、世界の広さ、違い、そしておもしろさを子どもたちに伝える取組を続けている。その一つが、毎月実施している「世界の料理」です。この活動では、子どもたちが異なる国の食文化に触れ、自然と多様性への関心を高めています。
食文化の違いから素朴な疑問が生まれ、各国の料理の背景にある文化や人びとの暮らしにまで興味が広がっていくなど、自然な形で異文化への関心へとつながっていきます。



地域課題に応える支援ネットワーク「TOMONI」の誕生
LIFE SCHOOL 桐ケ丘こどものもりの多文化共生に向けた取組は、やがて地域全体へと広がっていきました。多様な背景をもつ家庭と日々向き合うなかで、外国人住民が生活の中で多くの困りごとを抱えている現状が見えてきたためです。こうした課題に対応するため、地域のコミュニティソーシャルワーカーや専門機関と連携し、外国籍家庭の孤立を防ぐ地域支援活動団体「TOMONI(ともに)」を立ち上げました。
外国人住民の困りごと
- 保育園や学校からのお便りが読めない
- 日本語での会話に不安がある
- 行政手続きがスムーズにいかない
- 文化や慣習の違いにより、差別的な反応を受ける
- 近隣に知人が少なく、孤独を抱えている
TOMONIの活動
- 日本語の書類や手紙の内容をサポートする「お手紙サポート」
- 基礎的な会話や読み書きを学ぶ「日本語支援」
- ビザや制度に関する相談に対応する「法律支援」
- 住民同士のつながりを深める「地域交流」
- 活動中に子どもが安心して遊べる「あそび場の提供」
地域の保育園という「誰もが集まる場」がハブとなり、地域住民の方がたも巻き込むことで、支援の輪が日常の暮らしのなかで広がっています。





支援が届きにくい人に、どう寄り添うか
活動を続けるなかで直面したのは、「本当に困っている人ほど、支援から遠い」という現実。個別に声をかけても、さまざまな理由で断られることが多く、想いが届かないもどかしさがありました。
TOMONIでは、そうした人たちと自然につながるきっかけを生み出すために、ハラル対応のバーベキューなど、外国人住民が気軽に参加しやすいイベントの開催にも取り組んでいます。
食事や会話を通して交流が生まれる場づくりを大切にしながら、より多くの外国人住民の声に丁寧に耳を傾け、これからも、誰もが暮らしやすい地域を目指して活動を続けていきます。
広がり続ける「つながりの輪」
TOMONIの活動がもたらした最大の成果は、地域のなかで外国人住民の顔見知りが増え、つながりの輪が広がり続けていることです。 いまでは、TOMONIの活動にとどまらず、地区の運動会や朝のラジオ体操、地域の畑作業など、さまざまな場面で外国人住民の姿が見られるようになりました。 こうしたつながりは、日常の安心や相互理解の土台となり、地域そのものの変化を生み出しています。 今後、LIFE SCHOOL 桐ケ丘こどものもりでは、園児の約半数が外国籍家庭の子どもたちになる見込みです。多文化共生の視点は、ますます不可欠なものとなっています。
社会福祉法人つぼみ会は、
●保育にとどまらない生活支援
●地域を巻き込んだ多文化共生の実践
●支援が届きにくい人への丁寧な配慮
こうした取組を通じて、“支援する側・される側”という境界を越え、誰もが自然に関われる地域のつながりを、これからも育てていきます。
施設概要
~ひとりひとりを大切に~ わたしたちの目指す保育・教育
自分の目で見て、自分の足で確かめ、自分の頭で考え、自分の言葉で意志を伝えられるせかいのどこにいても豊かに生きることができる人を育てる

- 法人名
- 社会福祉法人つぼみ会
- 所在地
- 東京都北区桐ケ丘1-7-17
- 理事長
- 中嶋 雄一郎
- URL
- https://lifeschool.jp/
- 事業内容
- 保育所、放課後等デイサービス、児童発達支援