コラボレーションで広がる福祉の未来 社会福祉法人北養会(茨城県水戸市)

街の空洞化を止める、医療・福祉・教育の拠点「スイコウスクエア」

JR水戸駅からもほど近い、茨城県水戸市の市街地に「スイコウスクエア(水高スクエア)」と名づけられた一角があります。東京ドーム一つ分の敷地に、総合病院、福祉施設、医療専門学校、保育園、レストラン、フィットネスクラブなど12の施設が建ち並び、その中の福祉・教育部門を北水会グループ・社会福祉法人北養会が運営しています。

「郊外にぽつんとある施設は、そこに用事のある人しか行きません。けれど学校の隣に高齢者施設がある、幼稚園の隣に病院があるといった環境なら自然に知ってもらえます。いざという時に思い出していただき、サポートができる、それがエリアとしての重要な役割だと思います」と北養会の伊藤浩一理事は語ります。

まちなかに多目的な複合施設があることは、地域の企業との連携を後押しし、働きやすさにも寄与しました。伊藤理事が施設長を務める「特別養護老人ホーム もくせい」は、業務改善や職場環境づくりが高く評価され、令和7年度「介護職員の働きやすい職場環境づくり内閣総理大臣表彰及び厚生労働大臣表彰」で内閣総理大臣表彰を受けました。

地域と関わるためには欠かせなかった業務改善

「どうすれば福祉の仕事を長く続けてもらえるか」という問いが、常に伊藤理事の胸中にありました。現場職員の声を聞いたり、業務を観察したりするなかで「福祉の仕事を続けたい」と思える環境を整えていく必要を強く感じるようになりました。

例えばワンフロアを一人で担当するようなユニットケアの夜勤は、出勤から退勤まで他の職員と顔を合わせる機会がほとんどありません。「一人で業務をこなし、職場と家を行ったり来たりするような状況では、どうしても仕事のやりがいや自分の成長を感じづらいものです。地域との交流や他分野との関わり合いを持たなければ、広い視点は育ちません」と伊藤理事は話します。

そこでまず目を向けたのが日常業務の効率化でした。「現場が忙しかったら、地域のことを考える余力がありません。そのためにはやっぱり業務改善、生産性向上が必要なんです」と伊藤理事は力を込めます。伊藤理事が施設長を勤める特別養護老人ホームもくせいでは、Google Chatを用いた情報共有や、利用者の眠りを可視化するモニタリング機器「眠りSCAN」の導入により、業務効率化とコスト削減を実現しました。

さらに、福祉専門学校の学校長代行も務める伊藤理事が学生たちの声に耳を傾けるなかで、業務効率化と合わせて欠かせないと感じたのが、福祉のイメージアップでした。

「介護×ファッション」目に見えるイメージアップ

業務改善で生まれたゆとりを活かし、取り組んだものの一つがファッション企業とのコラボレーションです。現在では東京に本社を置く世界的アパレル企業、andSTホールディングス(旧アダストリア)は、水戸の商店街の紳士服店が発祥でした。「アダストリアでは以前から障がい者雇用という形で障がい者支援にアプローチをしている。さらに、誰もが着やすいユニバーサルデザインを追求する最中でもありました。縁遠い業界に見えるけれど、やっていることの方向性は一緒だ」と伊藤理事は気がつきました。

アダストリアとともに挑戦したのが“着たいと思える”介護ユニフォームづくりです。ファッション性よりも機能性が重視されがちな介護ユニフォームには、「ご利用者との外出時に恥ずかしい」という職員の声もありました。
プロジェクトにはファッションが好きな北養会の職員が中心となり、課題やアイディアを出しながら新しい介護ユニフォームが誕生しました。

協働によりお互いの強みと、解決したい課題が見えてくるなか、“障がいのある方のための服”にも注目。2025年12月には、インクルーシブファッションイベント「みんなでファッションを考え楽しむ日」が実現しました。バリアフリーのスイコウスクエアを会場に、介護福祉士がご利用者のために考えたコーディネートを披露したり、施設のご利用者や地域の方がたがショッピングを楽しんだり、障がいの有無に関わらず、だれもがファッションを楽しみました。

Win-Winになる協働の輪を広げる

さらに輪は広がり、地元プロバスケットボールチーム「茨城ロボッツ」とのコラボレーションにも繋がりました。応援席では多くの方が揃いのユニフォームを着て盛り上がる一方、障がいのある方がたにとっては通常のユニフォームの着用が難しい、という課題がありました。「障がいのある方も着やすいユニフォームをつくれないか」、そんな思いが茨城ロボッツ、アダストリア、北養会を結びつけました。

そして三者の協働によって、障がいがあっても着脱しやすい形状のユニフォームが完成しました。さらに拘縮が強く、ユニフォームを着られない方も一体感をもって楽しめるようにと、手につける応援グッズを作成するイベントも開催しました。
これらのプロジェクトは、北養会の職員たちにとって「障がいのある方がたにとって、どんなものなら着脱しやすいか」「どんな応援グッズなら身につけやすいか」など、介護職ならではの知識を活かし、形にする機会になりました。

伊藤理事は「企業側からすれば、僕らのもっている専門性というのは実はすごく価値のあるものなんですよね。別分野からの視点で自分たちの仕事を見直すことで、福祉の仕事にもっとプライドをもってほしい」と話します。

社会福祉法人が一方的に企業に「助けてもらう」関係では成功しないと伊藤理事は考えています。「三方よし、Win-Winになる状況をつくっていくことが、一度きりではない持続可能な事業の条件です」と語ります。
介護の専門性の向上とはすなわち「人間性や社会性の成長」だと伊藤理事は考えています。相手の立場になり、受け入れられる人間性こそが、よりよい支援にもつながっていくといいます。

福祉はあらゆる分野とコラボできる

若い世代への情報発信に積極的に取り組む北養会。ファッション、スポーツに加え、今後は食分野との協働を視野に入れています。

「例えば体調を崩して食欲がない時に、福祉の現場ではあまりおいしいとはいえない高カロリー栄養食をご提供するのが定番です。でも、やっぱりおいしいものを食べたいと思うんです。これまでとは違う、新たな介護食の定番をつくっていけたら」と伊藤理事はご利用者の目線に立ちます。

衣食住、生活全般を支える社会福祉法人は、あらゆる企業と協働できる切り口があるといいます。「市街地の空洞化にしてもユニバーサルデザインにしても、今ある課題に対して、自分たちの強みが何なのかを考えながら手を組む。相乗効果でやっていきましょうと。職員同士、そして法人外の方がたとの交流を深めながら、地域や社会全体が活性化していくことを意図しています」と話す伊藤理事のなかでは、まだ多くの構想が出番を待っています。

施設概要

法人名
社会福祉法人北養会
所在地
茨城県水戸市東原三丁目2-7
URL
https://hokuyoukai.jp/
事業内容

■入所サービス
・介護老人福祉施設
・介護老人保健施設
・ケアハウス
・救護施設
・養護老人ホーム
・サービス付き高齢者向け住宅

■在宅サービス
・通所介護
・通所リハビリテーション
・短期入所
・訪問介護
・訪問リハビリテーション
・訪問看護
・居宅介護支援事業

■教育施設

■保育園・学童保育

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