MIKAN-認知症みんなで考える中野ネットワークの立ち上げ
武蔵野療園では、東京都中野区で地域のために活動するさまざまな支援団体のネットワーク化を推し進めています。平成27年に設立した「認知症みんなで考える中野ネットワーク」(通称「MIKAN」)もその一つです。
――MIKANではどのような活動をしているのでしょうか。
「“誰一人取り残さない社会に向けて、普通に暮らすことができる地域づくりの実現”を目標に掲げ、認知症理解のための啓発活動を行っています。
MIKANでは、いままで、行政の職員や図書館の職員、学校の教職員・生徒、学生、タクシーの乗務員、地域の一般人他を対象として、認知症サポーター養成講座の後、介護現場の事例を寸劇で披露し、参加者と一緒に認知症の対応を学び、基礎知識や正しいサポートの仕方をわかりやすく説明してきました。これまでに延べ2,300名以上の認知症サポーターを養成し、その活動を支えてきました。
他にも様々な取り組みや連携をしています。例えば、在宅医療や見守りネットワーク「みまーも桃園」による、お出かけ安心キーホルダーの普及、居場所づくりの拡充、見守り訪問等の支援、さらには認知症地域支援事業推進事業「ささえさんプラザ」によるサロン活動を含めた様々な活動等です。
いざという時になっても安心できるようななじみの関係性を構築して、早いうちから、介護のこと、認知症のこと、高齢者のこと、医療のことなどを知ってもらい、地域の方がたが我が事として福祉に目を向けるきっかけをつくりたいと思っています。また、メンバー同士が顔なじみとなり、日頃から情報交換や相談ができる関係性を築くことで、支援団体のネットワーク化を進めています。」
――MIKANを立ち上げたきっかけを教えてください。
「若年性認知症の家族会と介護者支援団体の代表者から「区内の小さな組織同士の交流を促して共に助けあう仕組みをつくりたい」という相談に賛同し、設立に参加しました。」
――どんなメンバーで構成されているのでしょうか。
「家族会のほかに、オレンジカフェや地域ボランティア団体、介護看護事業所、町会、歯科医師、病院、精神科医やクリニック、訪問医療、地域包括支援センター、弁護士、中野区社会福祉協議会など多くの組織がつながり、40名近くのメンバーが啓発活動等に取り組んでいます。」
――今後の展望について教えてください。
「今後は、多くの教育機関にも協力してもらい、子どもたちにも認知症について知ってもらいたいです。メンバーはそれぞれ別のボランティア活動にも参加し、さらにネットワークを広げています。このつながりを活かし、地域で暮らす人が気軽に相談できる“人”や“場所”に必ずつながる仕組みをつくっていきたいです。」
他分野連携で地域を盛り上げる
MIKANの事務局になっている地域連携室は平成25年、「しらさぎ桜苑」内に新設しました。地域連携室を指導するにあたり、駒野理事長は介護従事者のつながりの強化を目標に掲げ、地域のために共に活動する団体「鷺宮エリア介護ネットワーク」を地域の仲間と発足しました。
――鷺宮エリア介護ネットワークではどのような活動をしているのでしょうか。
「介護が必要になった地域住民が安心して暮らせるように、他分野連携で一体的に支援できる協力体制を目指しています。
介護事業所や地域包括支援センター、福祉用具販売事業者など区内31の事業所、区社協地域担当がメンバーとなり、活動の中心はイベントの実施です。ケアマネージャーが集うランチミーティングや、福祉に興味をもつさまざまな業種の人たちが集まるケアラーズバルの開催など、親睦を深めながら情報交換や研鑽の場にもなっています。
また、介護業界を身近に感じてもらえるよう、普及啓発活動にも力を入れています。昨年には、第一興商のカラオケ機器に、鷺宮エリア介護ネットワークにて誕生した「ケアマネ音頭」が入ることになりました。2021年度から、65歳以上の高齢者を対象としたカラオケバトルの開催を行い、地域高齢者の生きがい支援を図っています。2024年度からは、エッセンシャルワーカー対抗カラオケバトルも開催します。」
「福祉は実践」支援の輪を広げる
武蔵野療園 地域連携室では、子ども食堂やフードパントリーなど、食の支援活動も行い、次なる支援につなげています。
――「子ども食堂さくら」を始めたきっかけを教えてください。
「地域連携室を立ち上げた当初、地域の子どもたちがどんな居場所を必要としているか、関係機関に話を聴きました。すると、食事もとれずに児童館に遊びに来ている子や、家で一人で食事をしている子など、食生活に課題を持つ子どもが多いと知ったことがきっかけでした。」
――「子ども食堂さくら」ではどんな活動をしていたのでしょうか。
「困っている子どもだけが集まる場所ではなく、世代間交流や子育て支援のための居場所づくりの場として開催しています。地域の皆さんにもそのように周知をしています。
すると、子ども家庭支援センターから支援を必要とする保護者がいるとの情報が入ってきました。生活に困窮している子育て家庭やひとり親家庭の現状を知り、子ども食堂からフードパントリーの取り組みにつなげていきました。」
――その後、どのような活動を展開しているのでしょうか。
「子ども食堂は近隣の小学校と学童の移転にともない、児童館に移管しました。2020年に緊急事態宣言が発令された折には、法人単独でフードパントリーを実施しました。
子ども食堂に参画していた保護者や区内の保育園の協力のもと、ひとり親家庭と直接連絡をとりあい、「子育て応援こまちゃんパントリー」で随時支援にあたっています。
さらに、2021年からはプロジェクトの新たな試みとして相談支援型の「さくらフードパントリー」を始動しました。食に困っている区民を対象に法人職員が施設で個別相談に応じ、食の支援を通じて困り事や悩みを聴いています。そこから法人間のネットワークを活かして関係各所につなぎ、状況に応じて支援を展開しています。」
――取り組みの中で大切にしていることを教えてください。
「福祉の実践は、相談を受けることからはじまります。地域の皆さんが気兼ねなく相談に来られるように、どの施設も“なじみのある場所”にしておくと同時に、困っている人に必要な支援が行き届く仕組みをつくっていきます。」