ワクワクする「かたつむりの家」 ~広島の絵本図書館~
JR山陽線新井口駅を降りて西へ歩き、広島風お好み焼きに欠かせない「オタフクソース」の本社を通り過ぎてしばらくすると、住宅街の中に、ゆるやかなカーブがある丸みを帯びた建物が見える。
2021年9月、「かたつむりの家」と名付けたその建物で、社会福祉法人丘の上福祉会は絵本図書館を開設した。
「かたつむりの家」は、同会が運営する「もみの木保育園井口園」の敷地内にある。
玄関から、大人だと少し頭がぶつかりそうな小さなドアを開けると、目の前には大木のような螺旋階段を中心に、ずらりと絵本の棚が並んでいる。緑色の温かい壁面に、部屋には少し木の香りがして、森の中にいるような気分になる。
「大木をくりぬいたようでしょ。この螺旋階段、人気なんです。」と、(社福)丘の上福祉会の西村恵美子理事長は言う。
筆者も子どもの頃に読んだことのある「かいじゅうたちのいるところ」といった世界的に有名な絵本だけでなく、地元広島にまつわる作品、海外作品の翻訳版など、幅広い蔵書が取り揃えられている。
「絵本の購入資金は当初は全くありませんでした」
絵本はゼロから収集を始めた。絵本の寄贈を呼び掛けながら、(社福)広島県共同募金会のテーマ募金(※)を活用し、3年間で500万円の寄付金を集め、絵本購入の大きな資金とした。
※テーマ募金とは…
https://www.akaihane.hiroshima.jp/
螺旋階段を昇った2階には海外の絵本のブースがあったが、まだ絵本を収める余裕があるようだった。さらに、集会が行えるくらいの広いスペースと、大量のイーゼルが置かれていた。
「イーゼルは近隣の学校から、何かに使えると思い譲り受けたものです。(笑)今はコロナ禍もあって難しいですが、今後は絵本の読み聞かせのイベントなどを2階で行えたらと思っています。」
「まだまだ絵本を増やしていきたいと思っています。ただ、テーマ募金は3年間しか活用出来ないという制限があります。そのため、当面は今の蔵書数を維持しながら、新しい本をどう補充していくか模索しています」
絵本、そして「かたつむりの家」への強い思いに応えるように、地元の住民だけでなく、県外からも利用者が訪れるという。
「いつまでもここにあり続けてほしい」 ~地域の方々の声~
今回、近隣から通われている方を中心に、実際に絵本図書館を利用する方々に質問を行った。
※個人情報保護の観点から、ご本人の情報、回答内容を一部変更しています
●地域に住まわれて10年のAさん(パート・主婦、3人家族)
好きな絵本:「さっちゃんのまほうのて」
「お父さんやお母さんの関わり方や言葉が大好きで、こんなお母さんになりたいと娘時代に思ったものです。」
――利用するようになったきっかけ、図書館の好きなところを教えてください。
「息子の小学校で読み語りの活動がきっかけでした。この図書館は絵本がたくさんあり、図書館長が絵本に詳しく、絵本についていろいろ教えて頂けるところが気に入っています。」
――絵本図書館は今後どのような場所になってほしいですか?
「地域の交流の場になったらうれしいですね。例えば、毎日第一〇曜日は伝承遊びの日とか決めて、コマ回しやけん玉をやったり…。地域の方に地域の子どもが交流しながらできたらいいですね。」
●地域に住まわれて36年のBさん(会社員。3人家族)
好きな絵本:「ピーターラビット」
「娘が好きな絵本です。うさぎが好きみたいで。」
――図書館を知ったきっかけを教えてください。
「初めての子育てで、娘にどんな絵本を選べばよいか悩んでいた時期がありました。インターネットで検索したら偶然ヒットして知りました。絵本図書館で先生やスタッフの方と話ができて、いろいろアドバイスも頂けました。」
――どのような交流がありましたか?
「娘が0歳の頃に初めて来ました。先生やスタッフの方が「ハイハイ上手だね~」とか、娘のいいところをたくさんほめてくれたり、声をかけてくれたことが今でも印象に残っています。…実は娘がここの保育園に通っています。」
――絵本図書館に通ってみていかがですか?
「会員登録もなく気軽に利用できるし、貸出期間が長いし、先生やスタッフの話題が豊富で。気軽に利用できます!」
――絵本図書館は今後どのような場所になってほしいですか?
「娘が成長しても通い続けられる場所でいてほしいです。」
●地域に住まわれて1年のCさん(専業主婦、3人家族)
好きな絵本:「こぐまちゃんシリーズ」
――絵本図書館を利用するようになったきっかけ、気に入っているところを教えてください。
「主人が子どものためにネットで見つけてきたのがきっかけでした。通ってみて、新しい絵本がたくさんあって、子どもだけでなく大人も楽しめるところだと感じています。他の図書館と違って、子どもがゆっくり本を探せるのもありがたいです。」
――よく利用されているとのことですが。
「何度も利用していて、うれしいことに名前を憶えてもらったんです。大人の自分にも図書カードを作ってくれて、新しく入った絵本を1番に貸してくれたり、とてもありがたいです。」
――絵本図書館は今後どのような場所になってほしいですか?
「いつまでもここにあり続けてほしいです。」
「子どもはもちろん大人も楽しめる絵本を」 ~絵本図書館への思い~
「かたつむりの家」を立ち上げた西村さん、「かたつむりの家」館長を務められている三浦精子さんに話を伺った。