障害者支援での経験から感じた食育と共食の大切さ
りんごの生産量全国一を誇る弘前市に、障害者支援施設「千年園」がある。
千年園から車で3分ほど。弘前市が運営する地域の交流施設「千年交流センター」で、地域に暮らす方が集い、一緒に食事をつくり、みんなで食卓を囲む「みんなの食堂 おいでえーる」が開催されている。
「おいでえーる」の運営を担当する井澤さんにお話を伺った。
「本来は施設で活動予定でしたが、コロナ禍の影響で活動開始以来、千年交流センターにお世話になっています。センターの職員の皆さまにもいろいろとご協力いただいています。」
コロナ禍の中では開催できるのかできないのか、開催基準を日々模索しながら、開催日を分散するなど工夫をしながら定期的に開催してきた。
「今は毎月2回、定員各回20名で、千年交流センターで開催するようにしています。開催が中止になった時も、参加予定だった方に個別に連絡を取って体調をうかがったりしてつながりつづけるようにしています。分散して開催し、曜日を変えてみると、参加して下さる方々の世代がより幅広くなったのが発見でした。」
(社福)千年会は、平成4年に身体障害者療護施設として「千年園」を開設し、長く弘前市で障害者支援に取り組んできた。
「支援を行う中で、偏食をされるご利用者さまを心配していました。そういうこともあって、法人では食育への意識を強く持ってきたところです。そんなおり、青森県が「みんなの食堂」の開設・運営を募集していたので、取り組むことにしました。」
「地域には、独居されている高齢者の方や、地元の食文化を伝えたい子どもたちが暮らしています。地域の方々を食育で支えたい、みんなで食べる=「共食」ができる居場所をつくりたい。そうした思いをもって活動をしています。」
ある日の食堂の様子 ~現地インタビュー
今回、(社福)千年会 井澤さんにご協力を頂き、1月13日(金)、14日(土)
に開催された「おいでえーる」に参加された6名の方にインタビューを行った。
※個人情報保護の観点から、回答内容を一部改変しています。
今回の開催テーマは、「お粥はからだにいい?」(金曜日)、「コンビニベジうまめし」(土曜日)とのこと。雪が降っても、たくさんの方が参加されました。
――「おいでえーる」に参加するようになったきっかけを教えてください。
・もともとこのような活動に興味があり、役場でチラシを見ました。
・違う活動に参加していた時に、この活動を見かけておもしろそうだと思って。
・町でチラシを見かけて興味を持ちました。
・活動に参加していた友人からの紹介で一緒に参加しました。
・市役所でチラシを見かけた時のテーマ(魚を捌こう!)に惹かれて。子どもに魚を捌くのを体験させたかった。
・もともと参加していた幼稚園のママ友からの紹介で参加しました。
――「おいでえーる」で一番印象に残っているエピソードなどあれば教えてください。
・初めて参加したのが、2年前のクリスマスの時でした。子どもたちがたくさんケーキを作っていて、「いっぱい食べて」とたくさんのケーキを食べました。
・りんごハンバーグが美味しかったです。なかなか家ではりんごを料理に使わないんですが、ハンバーグや他の料理にすると食べやすくて美味しかったですよ。
・食生活改善委員をしているのですが、ここで体験した事を違う活動で子どもたちに教えたり、委員として後輩の指導などにも役立っています。
・大学生がボランティアで参加していて、若い方と一緒に活動できて楽しかったです。
・「お弁当を作ろう!」というテーマの回で、子どもたちとキャラ弁作りをしました。これがきっかけで、自分の子どもがお弁当を作ったりしています。
・子どもが小食で、好き嫌いが多いんですが、このような活動に参加すると色々な食材をたくさん食べてくれるようになりました。
・色々な年代の子どもたちがいて、仲良く遊べることが気に入っています。1歳の子どもも参加しているんですが、その子のために離乳食を作ってくれたことが印象に残っています。
――この「おいでえーる」が今後どのどのような活動をしてほしいですか?
・もっと色々な方に宣伝して、色々な方にもっと参加してほしい。
・一人暮らしの人やなかなか外出できない人にも、もっと参加しやすい取り組みもしてほしい。
・郷土料理やうどん打ち、お菓子作りなど色々と体験できる活動をこれからも続けてほしい
・地域の特産品の活用や季節のイベントなども多く取り入れ、もっと色々な方に参加してほしい
・公園などでの外での活動なども取り入れ、体を動かしたり、自然の中での食育なども行ってほしい。
参加者の居場所として。地域共生社会の実現に向けて
当日、インタビューに答えていただいた方々は、近隣の町内会からだけでなく、車で30分ほど、市外から参加された方もいらっしゃった。
また、近隣で一人暮らしの方や、親子で参加された方も。
地域の様々な方が参加する、まさに「みんなの食堂」といえる場所が、弘前に生まれていた。
「おいでえーるは子どもから大人まで、1人でも親子でも、誰でも参加できる活動です。参加していただいた皆様のそれぞれの居場所となる様、活動しています。」と井澤さんは語る。
「今後は皆さまからのアンケートや意見も取入れ、施設の資源(人・もの・場所・ノウハウ 等)を有効に地域に還元し「受け手から支え手へ 食育を通じての地域の活性化 地域共生社会の実現」を目標に地域の人たちが地域で活躍できる仕組み作り、孤独・孤立させない仕組み作りを目指していきます。」